笹藪の道②(足尾山地縦走)

土壌によって生息する植物は変化する、標高が高くなると樹木は減り笹が一面を覆うようになる、そして更に標高が上がると屈強なハイマツが生息し、限界点を越えると植物の姿は無くなっていく。
笹藪の道②(足尾山地縦走)
高山は植物が無いから眺望が良い、低山は植物の種類が豊富だから景観が良い、高山と低山の間、笹の生える地帯というのは一見緑の一面で美しく見えるが、単調で意外と飽きやすい景色である。
またこの地帯は歩き難く、登山道の管理はこの地帯が一番大変で、竹や笹は成長力が高く刈ってもすぐに伸びてしまうので整備にコストがかかってしまう。
整備の行われていない放置された道は笹薮となり進行の障害となる、『藪漕ぎ』とは笹薮を進む行為に対して作られた言葉で、水をかく様にしないと進めないという意味で、それだけ難路という事だ。

今回のルートはそんな笹薮ばかりのルートで、笹の脅威について痛感させられた。もう笹薮はコリゴリだ、未整備の笹道には近寄らないようにしよう。

ルート(3日間)



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【Day1】原向駅~鋸山手前
距離:18.569km
累積標高(登り):2341m
累積標高(下り):1000m

【Day2】鋸山手前~P2077手前
距離:13.005km
累積標高(登り):1715m
累積標高(下り):1631m

山行記録


DAY0 移動日


早朝出発の為前日に移動、わたらせ渓谷鐵道の終電で原向駅に向かった、この「トロッコわっしー号」は内装が洒落ていて乗り心地が良かった。
地元の人と話をするとこの鉄道は学校に通う学生の為に維持していて赤字らしく、各自治体の負担によって運行している事だった(古河グループが負担すればいいのに)。沿線には渓谷散策や足尾銅山など魅力的な観光地はたくさんあるので、是非観光に訪れてみてはいかがだろうか、一日フリーきっぷは1850円とお得ですよ。

原向駅は無人駅なので、本日は駅構内で宿泊することにした。駅前は住宅地、ドアもあるから深夜に熊に襲われることもなく安心だ。



DAY1 天気:晴れのち曇り


朝5時に駅を出発。今日の目的地はネギト沢のコル、距離は28kmなので14時には到着できるとこの時は思っていた。



国道を南下してトンネルの脇が二子山の取付点となる、トンネルの側道を歩き登山口を探してみたが標識もテープも見当たらなかった、どうやらここはバリエーションのようだ。
200m程急登を登ると鉄塔があり、そこからは緩やかな尾根道となる。基本的に広い尾根は嫌いだが、ここは緑が豊かで景観が良かったので気持ち良く歩くことができた。





標高を上げるに連れて景観はどんどん良くなっていった。草や苔で全体が緑色に覆われ小川まで流れている、涼しい早朝の空気と相まって心が癒やされていく。P1358から登山口合流点までの景観が特に素晴らしかった。
P1358の次のピークが二子山となるが、標識は見当たらずどこがピークなのかは判らなかった。二子山という名称なので二つのピークが存在し、地図にも隣り合わせのピークが記されているが、緩やかな盛り上がりの地形なのでピークの判別が難しい。



登山道合流点からの景観も良好、賽の河原、小丸山からの眺望、可愛らしい袈裟丸山避難小屋など楽しい気分にさせてくれる景色が展開した。









前袈裟丸山からは道が悪くなった。。前日地元の人の話で整備困難な崩落箇所があり一部が通行禁止になっていると聞いたが、まさか全体の整備もされていないとは(当たり前だけど)・・・ここから笹薮との長い格闘が始まった。。




崩落箇所を通過して後袈裟丸山へ、問題部分は越えたのでまた整備された道になるかと思いきや、その先も藪道が続く・・・「何で整備していないの?」
笹薮、ハイマツ藪、倒木だらけの難路が続く、しつこい悪路に心身ともに疲弊しペースはどんどん落ちていった。後袈裟丸山 ⇒ 中袈裟丸山 ⇒ 奥袈裟丸山と袈裟丸山エリアを越えると、勾配は緩くなったが不明瞭となり、進路にも悩むようになり更にペースが落ちていく。尾根が広く、ピークも広い(法師岳のピークが特にわかり難い)ので、注意していないと主稜線から脱線してしまう。




泳ぐように笹薮をかき分け六林班峠に到着、次の目的地の鋸山に向かうも方角を間違えてしまい暫く彷徨ってしまう。。六林班峠に戻ってきたのが15時、本日の目的地「ネギト沢のコル」までは10kmと絶望的な遅れとなっていた、この難路ではどう考えても今日中にネギト沢のコルまでは辿り着くことはできない。

ここで問題が発生、携行した水は2Lで、予定ではネギト沢のコルの水場で補給する筈だった。残りは1100ml程、ネギト沢のコルまでの水場は調べてないし、途中で幕営してこの水量で果たして足りるのだろうか?
水分に不安がある状態で歩くのは危険だ、六林班峠からは営業小屋の庚申山荘に通じる道があるので、今日はここを利用して水を確保してルートに復帰することにした。しかし・・・

その道も笹薮に毒されていた

谷の巻道で斜面に笹が生えているので足元が滑って思うように進めない、この状態では日暮れどころか一日かけても辿り着くことはできないだろう。回避しようとしたらまた笹薮、[笹薮が現れた]→[逃げる]→[キング笹薮が現れた]ってRPGゲームかよ!



ダメなものはダメ、選択肢は一つだけ、このままルートを進むしか無い。先程とは異なる位置から鋸山方面に進むと、踏み跡のある稜線に乗ることができた。疲労と水の消費も抑えたいので、ゆっくりと進んでいく、雲行きが怪しくなってきたので17時前にシェルターを設営した(鋸山の手前)。
土面が無いから笹の上に張ったら、フワフワと弾力がありベットのように心地が良かった。太い茎の笹だとフロアに穴が空いてしまうが、草みたいな柔らかく細い茎の場合は上に敷くことができるのだ。




シェルターを設営して雨が降るのを待った。日中の強い日差しと疲労で体温が高いからシャワーでも浴びたかったが、雨は少量で露を集めて体を拭く事しか出来なかった。
雨があがると合唱が始まった、鳥や動物たちの鳴き声が山中にこだました。雨が降りそうな時は鳥が右往左往し、雨が降っているとカエルが鳴き始め、雨が止むと動物たちは鳴き声を発する。この習性は何なのか?私には歓喜の表現に聞こえる、その明るい声を聞いていると私も気分が良くなったので、泣き真似をしてその場の共感を得た。
大合唱という程の大きな音、「こんなにも居たのか」と出現する動物の数には驚かされた。喜びで周りが見えていないのか、私のシェルターを間近で気が付きビックリしている動物も多かった。

大抵の動物は人間に対して恐怖心を持っているので近づいてこないが、稀に興味を持つ動物が存在する。大合唱の際「キャン、キャン」と叫ぶ動物(鹿かな?)に目をつけられ、その後も何度も叫ばれて正直困ってしまった。。鹿と言えど気性が荒い場合は、蹴りで撲殺させられる恐れもあるので、安易に近づくのは危険だ。シェルター内から「ウゥー」と威嚇したが効果は無く、私の覚えているだけで10回近く、睡眠時も含めると何十回と私に訴えかけていたようだ。その動物は私に何を伝えたかったのか?縄張りから出て行けという意味なのか、それとも構って欲しかったのかな?

夕飯はレトルトカレーと紅茶のみ、水分は残量が1Lを切ってしまった。。

Day2 天気:曇りのち雨


朝食はソイジョイとゼリーと水を少々、本日も朝5時に出発した。
10分程で鋸山に到着。鋸山を下ると道標が現れ一般登山道となった、やっと難路が終わった、このまま一般登山道なら現在の水量でも水場に辿り着くことが可能だ。




鞍部から山頂までは標高差の大きい登りとなるが、広い土面の道に安堵し辛さはあまり感じなかった。
皇海山の山頂は展望の無いつまらない内容だった。実はこの皇海山という山が百名山という事は後日知った、なぜこの山だけ整備されているのか謎だったが、百名山だから整備されていたという事なのね(他も整備して!)。



明瞭な道は山頂まで・・・次の三俣山への道はまた未整備となっていた。。
暫く足を進めることに戸惑った、この先どんな難路が待っているのか?これまでは序の口でもっと嫌らしい箇所が出現するかもしれない、この登山道から下山すれば苦難からは解放される。
しかしまだ時間はあるし、状況が悪いとも判別できない、とりあえず突っ込んでダメだったら引き返すことにして先に進むことにした。

皇海山からは複数の尾根があり、三俣山への尾根(稜線)に進めるか心配だったが、ラッキーアイテムによって難なく尾根に下ることができた。樹木に打ち込まれた金属の道標、細かい間隔で設置してありこれをさえ追っかけていれば迷うことは無い。




暫く下っていくと緩やかな勾配となり見晴らしが良くなる。その先は国境平となり、ここでは焚き火の後が数か所あった。





国境平から三俣山までは距離は約3.5kmだが、私は疲労の所為か4時間もかかってしまった。。
国境平と三俣山の真ん中辺りに、岩肌の露出した立派な山容のピーク(1828m峰)があるが、私はこのピークを三俣山と勘違いした。私は名前のあるピークと言えばそれなりの山容という間違った認識を持っているので、よくこの間違いを犯す事が多い。。





山頂標識が無かったり、山頂からの景色と地図の地形が異なるのにおかしいとは思っていたが、進みが遅いという状況を受け入れられず無理に肯定していたのかもしれない。三俣山の山頂標識を見た時は落胆しながらも、「やっぱりそんなもんだよな」と大きな衝撃は受けなかった。




三俣山からネギト沢のコルまでは約3km、出発時に800mlだった水分の残りは300ml位あるので十分足りそうだ。昨日とは異なり今日は曇り空で気温も高くないので水分の消費量も抑える事ができたのも幸運だった。
宿堂坊山に進み、山頂から下った鞍部がネギト沢のコルとなる。ザックを下ろして水場へ・・・・・・昨日からの不安がやっと解消された(*´~`*)






水を3L汲み、体を拭いたりとゆっくりと休憩を取って、15時前にネギト沢のコルを出発した。16時過ぎにシェルターを設営(P2077の手前)、まだ明るく行動は可能だったが、水を得た安心感と疲れもあったので早めの幕営とした。


たんまり水はあるのだが、胃もたれが酷く全く食欲が無い・・・紅茶など水分のみ摂取して食料には手を付けなかった(´-ι_-`)

最終日に続く。

ルート評価


区間ルート評価


【原向駅~二子山~前袈裟丸山】 オススメ

景観  :★★★★☆(4.5)
ルート :★★★★☆


歩きやすい緩勾配の尾根道、静かで豊かな緑の景色で癒やし度の高いコースです。特にP1358と二子山の間の区間の景観が素晴らしかったです。小丸山と袈裟丸山は美しい花が群生していて、春先や紅葉の時期に訪れる人が多いそうです。
取付点(国道122号トンネル入口)から尾根までは急登ですが(2・300m位)、その先は緩やかな道が続いています。折場登山口の合流点まではバリエーションとなりますが、特に不明瞭な箇所はありません。

【前袈裟丸山~奥袈裟丸山~六林班峠】

景観  :★★☆☆☆(2.5)
ルート :★☆☆☆☆


前袈裟丸山から南の道は、鞍部の風化で整備が困難という理由から通行禁止(自己責任)となっています。その為、この区間は整備がされておらず道は非常に荒れています、笹薮やハイマツ藪、倒木も多く通過に時間がかかります。奥袈裟丸山から先は緩やかな勾配となりますが、不明瞭な箇所があり法師岳辺りは注意が必要です。
袈裟丸山の一般登山道は『折場登山口から前袈裟丸山』『群界尾根登山口から後袈裟丸山』、それと『六林班峠から庚申山荘』がありますが、庚申山荘までの道は未整備で通行が出来ない状態となっていました。

【六林班峠~鋸山~皇海山】

景観  :★★★☆☆(3.5)
ルート :★★★☆☆


鋸山の展望は良いのですが、皇海山は樹木に覆われ展望はなく、コース上の展望も殆どありません。皇海山は百名山となりますが、付近の山より少し標高が高いというだけで特に魅力は感じませんでした。
六林班峠は平坦な地形で不明瞭ですが、北側に少し登っていくとわかりやすい尾根となります。鋸山から下った鞍部は登山道の合流点(不動沢のコル)となり、ここからエスケープすることが可能ですが、沼田市までは距離があるのでヒッチハイクが必須となります。

【皇海山~三俣山】 オススメ

景観  :★★★★☆(4.5)
ルート :★★★☆☆


展望に優れた区間で気持ち良く歩けますが、藪道なのが残念なところです(整備してもらいたい)。三俣山は展望がありませんが、途中の1828m峰の眺望が非常に素晴らしかったです(国境平の景観も良好)。
皇海山からは金属プレートの目印(赤・黄・白)が木に打ち付けられていて(白檜岳まで)、これを頼りに進めば迷うことはありません。この目印が無かったらGPSを携行していても迷う可能性がある程この付近の地形は複雑です。

【三俣山~錫ヶ岳】

景観  :★★★☆☆
ルート :★★☆☆☆


ピークからの展望はなく、コース間も樹木に覆われ展望はあまりありません。水場は三俣山と宿堂坊山の間、ネギト沢のコル、錫ヶ岳の先の錫ノ水場にあります(手前は国境平)。

タイム


一日目


目的地標高m地点km距離km時間備考
原向駅5770-4:56
二子山取付点5402.82.85:27
P135813586.63.87:21
登山道合流点15658.51.98:20一般登山道
小丸山16769.91.48:49一般登山道
袈裟丸山避難小屋160010.30.48:58一般登山道
前袈裟丸山187811.51.29:45一般登山道
後袈裟丸山191012.20.710:16
中袈裟丸山190012.70.510:42
奥袈裟丸山196114.21.511:58
法師岳194115.2112:50
六林班峠179516.71.514:33
六林班峠179517.20.514:58進路不明で彷徨う→戻る
六林班峠179517.60.415:18庚申山行を目指すが藪道→戻る
鋸山手前で幕営191818.6116:41

二日目


目的地標高m地点km距離km時間備考
幕営地19180-5:05
鋸山19980.50.55:14
不動沢のコル18621.20.75:43一般登山道
皇海山214420.86:21一般登山道
国境平15933.91.97:45
P182818285.929:42
大ナラキの頭18416.30.410:09
三俣山19807.51.211:41
宿堂坊山196810.22.714:00
ネギト沢のコル184310.60.414:18
ネギト沢のコル1843110.414:40水確保→戻る
P2077手前で幕営200313216:12


その他の写真


20170715
20170716
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