旅の始まり(燕と私)

興味を持つこと、それが旅の始まりです。どのようなきっかけで山登りを始めるかは人ぞれぞれ異なります。私の原点は『燕岳』です、この山に出逢わなければ山とは無縁の生活を送っていたと思います。
旅の始まり(燕と私)
今回は私が山を始めたきっかけとなった燕の魅力について綴っていきます。

※画像はGoogle Earthでキャプチャしました。グーグルアースは、様々な視点から山を見ることができ、ズームアップすれば登山道まで見えます、そして積雪状態までも解ってしまうという優れ物なのです(画像は現在の状態なので雪が残っています)、グーグルアースでバーチャール登山を楽しもう!

私が初めて山に登ったのは小学校低学年(一年生か二年生)の時、初体験の山が燕岳だった。家族旅行の初山でいきなり北アルプスというのはどうかと思うが、幼少期からスポーツ少年だったので体力的には特に問題はなかった。中房温泉から合戦尾根を登り、燕山荘に一泊し翌日下山した。景色は綺麗だったが細かくは覚えていない、それよりも子供ということでチヤホヤされた事の印象が強い、ただ登っているだけなのに「凄い」と言われるのは気分が良かった。あとは燕山荘での宿泊も印象に残っている、山小屋独特の構造や雰囲気は秘密基地のようでワクワク感があった。

初めての山行は最後が宜しくなかった。食べ過ぎたのか出し忘れたのか原因は忘れたが、下山途中でトイレに行きたくなった。登山口まで我慢するもあと一歩の所で力尽き、う○ちを漏らしてしまう・・・切なすぎて泣いた、そして一緒に行った兄弟には数ヶ月に渡りこのネタで馬鹿にされた(TдT)

お漏らしがトラウマになった訳ではないが、それ以降は山に登ることは無かった。そして月日は流れ私は大人になっていた。その頃の私は仕事中心の生活を送っていて、夜通し遊び日中はのんびりとアウトドアやスポーツといった趣味には興味を示さなかった。そのうちに街の遊びにも飽きてきて、スカイダイビングやバンジージャンプなど刺激を求めたが面白みを感じなかった。

「なにか面白い事はないか?」ふと幼少期を思い返して山に登ってみようと考えた。二回目となる燕は前回と全く同じコースと日程で登った。

【燕岳とは?】燕岳は北アルプスの南東に位置する標高2763mの山である(200名山)、コースは中房温泉登山口から合戦尾根を登る、この登りは北アルプス三大急登と呼ばれている


山は私に望み以上のものを与えてくれた。目に映る全てのものが新鮮で、大自然の姿を見ていたら下界での出来事がちっぽけに感じた。また登山という行為にも惹かれた、手軽に感じられる絶景とは異なり苦労する事でその価値は何倍にも膨れ上がる。私は山登りに興味を持った、そしてここから私の旅が始まった。

『山は山から学ぶ』、書籍や誰かに学ばなくても山が導き教えてくれる。燕岳はこの考えを体現した山である、燕には山登りのレールが引かれていた。
私は燕山荘から見える尖った山をまじまじと見つめた、その美しい山は槍ヶ岳という山だった。

「あの山に行ってみたい」
目的地までは道が続いている、難しいことはない、行為そのものは単純明快だ。この道を辿っていけばあの山に登ることができる。登山に関してはまったく無知の初心者でそれが縦走という行為であることはその後知った。
私は次にこの道(表銀座コース)を歩くことを計画した。

【表銀座コースとは?】中房温泉から燕岳を登り、常念山脈から大天井岳へ、西岳からは東鎌尾根で槍ヶ岳に登る、この縦走路を『表銀座コース』と言う


現在なら一泊二日で行けるルートだが、初心者という事で三泊四日の計画を立てた。まとまった休みが取れず計画の実行は遅れ、翌年の夏に登ることになった。
一日目は合戦尾根を登り燕山荘に宿泊、二日目はに大天井岳を経て西岳ヒュッテ、三日目は東鎌尾根で槍ヶ岳に登り槍ヶ岳山荘に宿泊した。下山は槍沢から上高地に下った(一日で下山したか途中で小屋を利用したかは忘れた)。


山の頂から頂きへ、稜線歩きは尾根登りとは異なり景色をより楽しめた。点々と山小屋を移動し目的地を目指す、まるで冒険をしているような気分だった。
そこで新たな道を発見した。RPGゲームのように歩いていれば新しいクエストが見つかりスキルアップを導いてくれる。
私は東鎌尾根から見える険しい尾根をまじまじと見つめた、その美しい尾根は北鎌尾根というルートだった。

「あの尾根を登ってみたい」
私は次の目標を北鎌尾根とした。しかし、その尾根は人を拒むようなオーラを発していた、素人目線でも容易に登れそうもない事が理解できた。
北鎌尾根を登るスキルを調べる、必要なスキルはクライミング技術と幕営技術だった。私はフリークライミングを始め、幕営する為の装備を購入した。

【北鎌尾根とは?】槍ヶ岳の北側にある尾根で唯一のバリエーションルートとなる、西は西鎌尾根、東は東鎌尾根、南は大喰岳西尾根。過去には加藤文太郎や松濤明が遭難死している(冬季)

個人的には北鎌尾根は日本で一番美しい尾根だと思う(稜線は別)。
北鎌尾根は末端から登るルートと途中から取り付く北鎌沢のルートがあり、無雪期は北鎌沢のルートが一般的となる。北鎌沢へのアプローチは水俣乗越から下降するか貧乏沢を下降するが、私は貧乏沢ルートを選択した。

クライミングスキルを学び、前日に懸垂下降を会得する(フリークライミングはマルチピッチ以外は懸垂下降を行わない)、テントは重いので自立式のツェルトを購入した。
計画は翌年の秋に実行した。前日は仕事が徹夜となり翌朝帰宅後に車を走らせ北アルプスへ向かった。昼前に中房温泉に到着し登り始める、初日は大天井ヒュッテまでの行程となる。2・3時間で燕山荘に到着し大天井に向かう(遅い時間だったので大天井方面に向かうのは私一人だけだった)。疲労がたまり途中で睡魔が襲ってくる、30分程仮眠しようと寝たら1時間以上寝てしまう・・・そしてあたりが暗くなり始める。
初めてのヘッデン山行を経験する、安物のヘッドライトは照射範囲が狭く遠くまで照らすことはできなかった。大天井岳とヒュッテへの巻き道の分岐点に到着する、目的地までは目と鼻の先だ。そのうちポツポツと雨が降り出してきた、道は細くなり足場も悪くなってきた。

「視界不良で道も悪い、このまま進むと滑落してしまう」大天井ヒュッテは諦め、細い登山道にツェルトを張ってビバークする事にした。
風が出てきたのでハーネスを装着しロープで鎖と連結する、風は益々強くなりツェルトが飛ばされそうになってきたのでポールを抜いた、密着したツェルトから雨が浸入する、シュラフカバーは持っていないので化繊シュラフが濡れて保温性が低下していく。初めての予期せぬ状況が雪崩のように襲い掛かってきて恐怖でいっぱいだった、結局一睡もできず朝を迎える。

雨は止んだ、ストーブで暖かいコーヒーを飲みながら次の行動を考える。シュラフは濡れ睡眠不足で体力も回復していない、一回目の北鎌は失敗に終わった。

二回目は中房温泉で雨が降り出して中止にした、この時は駐車場まで行って帰ってきた(燕も温泉にも寄らず帰宅)。
そして三度目、私は北鎌尾根を踏破した。初日に貧乏沢を下り北鎌沢出合で幕営、翌日北鎌尾根を登り槍ヶ岳の山頂に登った。途中道を間違えてP7に出た時は焦ったが(本来はP7とP8の間の北鎌のコルに出る)、その後は難なく山頂まで辿り着く事ができた(槍ヶ岳直下の登りはロープを出さなかったので少し怖かった)。

長く険しい尾根を登り山頂に着いた時の達成感、燕に初めて登った時に見たあの美しい尾根にようやく登ることができた。そして、次なるお題が閃いた。
私は山岳書籍を読み漁り、孤高の人(加藤文太郎)や風雪のビバーク(松濤明)の話をまじまじと見つめた、白い北鎌尾根は危険を犯して登るほど美しいに違いない。

「北鎌を厳冬期に登ってみたい」
私はアルパインクライミングと雪山を始め、数年後厳冬期の北鎌に登った。


人気があるから登るのではない、達成感を満たすために登るのでもない、その山やルートを美しいと感じるから登るのだ。燕岳とは美しい景色で一つの方向に導いてくれる素晴らしい山なのである。

登山とクライミングの原点は『燕岳』ですが、現在のハイキングに関しては『棒ノ嶺』が原点です、棒ノ嶺で低山の美しさやルートの良し悪しを学びました。

安曇節の歌詞


長野県の民謡に『安曇節』という歌があります、アルプスについての詞は心に響き、そして共感する内容です。

私が一番好きな詞は
『槍で別れた梓と高瀬 巡り逢うのが押野崎』
槍ヶ岳を源流に、千丈沢と天丈沢から成る高瀬川、槍沢と涸沢から成る梓川、安曇野の押野崎でこの2つの川は合流する。ロマンチック過ぎる・・・高瀬ダムから湯俣へ歩いているとこの物語を感じることができます。
「ここはひと気も無く淋しい場所だけど、下流に行けば陽気な奴ら(梓川)と出逢えるよ」

他に好きな詞はこの2つです。
『もとはアルプス雪消のしずく 末は越後の海となる』
黒部を歩いていると感じます、沢ルートは総じて浪漫がありますね。

『鳥も止まらぬ滝谷尾根で 若き情熱を燃やしけり』
「鳥も止まらぬ滝谷」という険しさを現した表現が良いです。今は崩落して滝谷は登れませんが、北穂や滝谷出合からはクラシカルな姿のクライマーの姿が想像できます。
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コメント

厳冬の北鎌一番素敵です。
その節はお世話になりましたm(__)m
また冒険したいですね!!
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