山と鈴

鈴は必ず携行し鳴らしています。なぜ山で鈴を鳴らすのか?山鈴の必要性と鳴らし方(ヤマラ式)について説明します。
山と鈴
熊鈴と呼ばれる事もありますが、熊鈴という名称は正しくありません。
山には熊以外にも危険な動物たちがたくさん住んでいます。猪・蛇・猿・鹿・リス・トトロなど(トトロはアニメだと可愛いけど実際にいたら熊より怖いと思う)、正しい呼び名は「山に住んでいる全ての動物名+鈴」となります。

しかし、「熊猪蛇猿鹿栗鼠都々路***鈴をください」「熊猪蛇猿鹿栗鼠都々路***鈴はこちらになります」「この熊猪蛇猿鹿栗鼠都々路***鈴の色違いはありますか?」「申し訳ございません、この熊猪蛇猿鹿栗鼠都々路***鈴はこの色しかありません」
と接客の時間が長くなってしまうので、頭の熊だけを取り『熊鈴』という略称が浸透していきました(ウソです)。

山は人間のものではありません。人間が勝手に権利を主張(土地を所有)しているだけで、山はそこに住んでいる動物(生物)たちの家なのです。

鈴は山に住んでいる動物たちに「すいません、通らせてもらいます」と合図する為の道具なのです。逆の立場で考えてみましょう。
【自宅で寛いでいたら、いきなり見知らぬ人がドアを開けて部屋に入ってきた】
こんな目にあったらビックリします。「ちょっと!突然入ってこないでよ!何か合図して入ってくるとか貴方にはモラルがないの?」と怒りたくなってしまいますよね。
人間社会では家の物を盗めば強盗になります、ただ浸入しただけでも不法侵入という犯罪になってしまうのです。この不法侵入を私達は山でやっているのです。

そう考えると、鈴を鳴らさない事はいかに非常識でモラルに欠けた行為という事が解ります。獣相手だから人の道を外れてもいいというのはエゴです、「彼らの家を歩かせてもらっている」という意識で、通行料として動物達の好物を供える位の感謝の気持ちを持ちましょう(※エサを与えると人間を怖がらなくなります)。

「何聖人ぶってるんだ」とお叱りを受けそうですが、まぁ感謝の気持ちは置いといて、とにかく動物達と遭遇しない事が重要です。その為には鈴を鳴らして自分の位置を知らせる必要があるのです。

熊について


私は今まで山で熊に遭った事はありません

人気のない深い山、当日熊出没情報があった山、ホヤホヤの痕跡(足跡・フン)、「この雰囲気は絶対遭うでしょー」と思っていても、遭遇した事はありません。
長く山をやっているのに熊に遭ったことがないなんて、、遭遇した登山者を羨望の眼差しで見ていた事もあった。
会うこと自体は簡単で、遭遇じゃなくてこっちから探せば見つけられるだろう。けど、それは先の例えだと、自宅に突然知らない人が現れて「ついに!ついに見つけたぞーーー!!」と叫ばれるのと同じ事だ。そこまで熊に興味は無いし、わざわざ危険な状態に飛び込む必要もない。

私が今まで熊に遭わなかったのは『鈴』のお陰だと思っている。
そして鈴を鳴らしていれば、今後も遭うことはないと半ば確信している。勿論遭う可能性はゼロではない。

可能性があるとすれば、それは人間を恐れない熊との遭遇だ。この場合まったく鈴は意味をなさない、寧ろ音を発して自分の位置を教えることになるので、逆効果ということになる。
人家に下りてくるようなイカれた熊に遭遇したら、諦めるしか無い。じっと伏せて熊の興味が無くなるまで耐えるしか無い。どんなに屈強な体格の持ち主も熊からしてみれば「動くぬいぐるみ」に見えるのだろう。

【熊と遭遇するパータン】
熊と遭遇するパターンは3つあります。
一つは『イカれ熊』との遭遇。これは場所も賑わいも関係ないので、人が大勢いても小屋の近くでも遭遇する。人を恐れないといっても好戦的という事では無いので、こちらの威嚇で逃げる場合もある。

二つ目は普通に人を恐れる熊で、ばったり遭うケース(鈴を鳴らさず)。小熊連れなど熊の注意が散漫になっていて人間の臭いに気づいていない。

三つ目は熊が嗅覚(人の臭い)や聴覚(鈴)で人を認識しているが、人がその場を離れず、熊が混乱して飛び出して遭遇するケース。
深い藪や視界が悪い場所で、かなり近い位置に居る事もある。「ガサッ」と音が聞こえたり、何かいそうな雰囲気の時は、立ち止まって様子を伺うのではなく、速やかにその場を移動するのが良い。その場に居続けると熊が自分の存在がバレたと思い混乱する。
お互いが視認していない状態なら、背を向けて歩こうが襲ってくることは無い(たぶん)。

【もし熊に遭遇した時の対処】
遭遇した時に動揺して取り乱さないように、予め行動パータンを決めておきます。
よく言われている方法ですが、私はこのパータンで行動すると決めています。

[1]目を合わせず後ろにゆっくり後退する。歩きながら遭遇すれば進行方向の逆に、休憩や振り向きざまに進んできた道に見えれば進行方向に後退する。

[2]それでも寄ってきた場合(想像するだけで怖い)は、体を丸めてダンゴムシになる(お腹&首か頭をガード)。横たわって死んだふりは効果無さそうだし、好機にすぐに行動できる体勢の方が良さそう(逃げられないけど)。
この状況を半袖短パンの時期に考えるとゾッとする、ハードシェルを上下着ている時は少し安心している(数発は耐えられるような気がする、でも鋭利な爪だとスッパリ切れるんだろうな・・・)。

[3]熊の興味が失せるのを待って、生きてたら帰る。

他にも色々な対処法がありますが、実際に遭遇したら混乱するのでシンプルな行動をすり込んでおいたほうが良いと思います。

【まとめ】
・鈴を鳴らして熊に位置を伝える
・近くに居そうな雰囲気を感じたら立ち止まらずその場を通過する
・痕跡を見つけたら近くに居るという意識を持ち、なるべく立ち止まらないようにする(不安だと思ったら引き返す)。
・万が一遭遇したら、落ち着いて行動する(無理だな)

『貴重な体験をカメラに収めよう』という気持ちも抑えたほうが良いでしょう。熊から見れば「飛び道具か?ナイフでも出す気か?出す前に殺ってやるぜ!」と興奮させてしまいます。遠目から見つけても、時速50キロの熊は瞬時に距離を詰めてきます。垂直の岩壁をも登る熊から逃げることはできません。速やかにその場を離れるのが賢明です。

熊に遭った事も文献を読みあさったこともなく、自分が山で感じた経験と人の遭遇情報からこの様な結論に至った。どんな情報も万全な対策はないので参考程度に捉えて下さい。

鈴の用途


鈴の使用用途は、動物に位置を教える事意外にもあります。

私はペースが早めなので人よけの意味でも鳴らしています。鈴を付けない場合(追い抜き)、いきなり背後につかれびっくりされる事がよくあります(追い抜き時やすれ違いは、視界に入った瞬間にスピードを落としています)。
鈴を鳴らせば「まもなくぅ~急行列車が通過しますぅ~」と事前に認識してくれる訳です。

あとは楽器として音を奏でるのも使い方の一つです。シャンシャン♪と一定のリズムで鈴を鳴らし、足を高くあげ腕を大きく振り行進すれば、楽しい気分に浸れます(ぼっちにオススメ)。単独でこれをやっている人は、一見危なそうな人に見えますが(実際は優しい)、微笑ましく、見てる人を楽しい気分にさせてくれます(+歌付きだとなお良し)。

鈴の鳴らし方


危険動物の対処法として『鈴を鳴らす』事の重要性を説いてきましたが、鈴は『諸刃の剣』の性質を持ち、時には鈴を鳴らすことで危険を招くこともあります。
私は状況に応じて鈴の音量を調整しています。

レベル4:出そうな雰囲気MAXの時。手元でガンガン振って音を発する
レベル3:少し怪しい雰囲気。ザックのウエストベルトに付けて、足の動きで鳴らす
レベル2:とりあえず鳴らしておこう。胸元に付ける
レベル1:消音モード。手のひらで包む
レベル0:ザックにしまう

音で動物を呼び寄せる可能性がある場合はレベル1にしています。寄ってくる可能性がある動物とは『野犬』です(低山に限る)。
あと夜間はレベル2か消音にしています。夜は僅かな音でも十分効果があるのと、暗さからふと気持ちが落ちることがありそんな時は消音にしています(心霊現象は信じないが、鈴の音に合わせてその手の物が出てきそうな感覚に陥る事がある、でも音無しの静粛も怖い)。
利用者が異常に多く道幅が広い場所ではレベル0で鈴は鳴らしません。

鈴の種類とマイ鈴


登山用の鈴は『鈴型』と『鐘型(ベル型)』の2タイプがあります。

鐘型:「キーン・カーン・ コーン 」高音タイプ
鈴型:「チリン・カラン」中高音タイプ

鐘タイプは高域が強すぎる物が多く、個人的には耳に障りうるさく感じる(キーンタイプ)。鈴タイプは当たり障り無い音だが音量が控えめなので頼りなく感じる。
しかし、山に住む動物の聴覚は、人間の5倍近くと高いので鈴型の音で十分効果がある。良く響く大音量の鐘型は人間でも不快に感じるので、動物にとっては壁ドンしたくなるくらいの迷惑行為に感じるだろう。
夜行性の動物からしてみれば「また五月蝿い奴がいるな、山シーズンの週末は殆んど眠れないぜ」「あの珍走団うっせーな!頭にきたから襲ってやるか!」と思っているだろう。
不安な気持ちは理解できますが、爆音の鈴はただの自己満足の迷惑行為という認識を持ちましょう(ラジオの方が許せる)。


私が今使っているのは左の鐘型タイプ、音は「カーン」という音で音量は控えめ。それまで使っていたのが右の鈴型、音は「カラン」で音量は左の鐘形と同じくらい。

【熊さんの岩登り】

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コメント

熊は一般人とはまったく話し通じなさそうなところがい良い。
熊鈴は熊を守るものでもあるんですね。
山野井さんも熊にやられた時、熊のほう心配してましたね。

なめとこ山の熊、読んだことありますか。
マタギの小十郎の、山歩きの描写がすばらしいです。
奥多摩の熊はなめとこ山の熊みたいに
ヤマラさんのこと見てるかもしれないですよ。
「なめとこ山の熊」読んで(見て)みました!宮沢ワールド全開の創造的で深い作品ですね。
趣味で狩猟をしている人に見てもらいたい(最近は殆んど見かけなくなった)。人家の駆除は仕方ないにしても山中での行為については疑問に感じてしまう。でも山歩きもエゴ行為だけどね・・・
山で視野を広げたら熊に会えそうですね(木の上に居るという意識は無かった)。
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