山小屋白書 その壱(感想)

7・8月と山小屋でバイトしていました。前々から一度は経験したいと考えていた山小屋勤務、内容はさておき念願が叶い新しい経験ができた事はとても良かった。
楽しかった・辛かったと簡潔に括るのもつまらないのでありのまま感じたことを綴り、山小屋の実情記録のひとつとして今後山小屋で働く人や山小屋を利用する人等への参考となれば幸いです。
山小屋白書

「その壱」が山小屋の勤務内容や感想、「その弐」「その参」は(愚痴)日記と記事を3つに別けて公開しています。

※愚痴や否定的な内容の文章を記しているのは、その時の感情や率直な考えをストレートに伝え参考にして頂く為の手法であり、同じ雇用形態である一部のアルバイトや雇用主に対する誹謗中傷を目的としたものではありません。故に当人に迷惑が掛からないよう実名は伏せて略称で表記しています。詳しい方なら文面や写真から推測すれば特定できるかもしれませんが事情をご理解いただけますようお願い申し上げます。

目次


  1. 山小屋で働いた感想
  2. 山小屋の現状
  3. 山小屋で働いていて良かった事
  4. 山小屋で働いていて困った事
  5. 山小屋の一日
  6. 営業期間中の仕事内容
  7. よくある質問

山小屋白書 その弐(日記)
山小屋白書 その参(日記)

山小屋で働いた感想


貴重な機会を充実させたいという気持ちで取り組んでみたが、予想以上に暇な時間が多く、自発的に新しい事を考えたり行動したりする機会も素材も少ない環境で、ダラダラとした生活を過ごしてしまった。
日の出とともに起き日暮れとともに寝るという自然的な生活に順応する事もできず、夜は寝付きが悪く遅くまで起き、朝は3時には目が覚めていた。
夜何かするにも20時には消灯となり、暗闇でできる事は限られる。ネット環境が無いのでヘッデンを付けて、手記を付けたり音楽を聴いたりしていた。
仕事に忙殺されるわけでも他に夢中になる事があるわけでもないのに、日中も睡眠欲は弱く、他の従業員は皆朝寝(朝食後)昼寝(昼食後)をしていたが、私は勤務期間中は一度も寝ることは無かった。グループ間で届け物をする為にその区間を走ったり、休憩時間中に近くの山まで走り体力を消耗した時も変わらず熟睡する事は無かった。
何かを期待して待機状態を維持していたことで睡眠欲が薄れていたのだろうか?

仕事内容に関しては初めは経験が無いことばかりで不安だったが、未経験でもすぐ覚えられる内容で特に難しく技術を要する事は無かった(多少クオリティが低くても問題にはならない)。
小屋番の仕事も遭難や災害時の緊急対応や小屋開け・小屋閉め以外の営業期間中の業務なら、ワンシーズン真面目に覚えればスキルは身に付く。
調理については、料理の基本ができていると楽に対応できる(包丁の扱い・だしの取り方・下準備等)。新しいメニューや従業員の食事は多少の味覚と興味があれば作れるようになる。衛生面だけは気をつけて食中毒を起こさないよう、食材のチェックは怠らないようにしたほうが良い。
受付・売店はすぐ覚えられる、設備に関しては多少知識が必要だが物が壊れたら交換するしかないので運用方法だけ覚えておけば良い。

営業期間が短く身につけたスキルも他で活かせる事が少ない為か従業員(バイト)の固定化が難しく入れ替わりは激しい。その為業務を簡略化し対応しやすくなっている。
事細かく業務を教えてくれるわけではないので、業務内容が多岐に渡る場合(小さい小屋)は自分で考え柔軟に行動し業務を覚えていく形になる。
私の場合は柔軟を超え良かれと思う事はどんどん改善していった。裁量権を与えられ自由にやってよいという許可を得ず行動していたので色々と注意を受けることも多かった。
報告に関しては徹底していて、事細かい事まで一々報告する慣習があった。今までの仕事では裁量権を得て重大な判断以外はまとめて事後報告していたので、慣れれない行動に対応するのが大変だった。

小さく最低限整っている小屋で大半を過ごし、残りの一週間は収容人数多い大型の山小屋で働いた。異なる環境で働く事で違いを体験する事ができた。
前者の小さな小屋では様々な業務をこなし全体を把握する事ができた。お客さんとの距離が近くサービスの向上を考えたり実施したりと柔軟に対応することができそれなりのやりがいを感じることができた。
逆に大型の小屋は回転させるために分業制を取る為、機械的な作業となってしまう。小屋の仕事の一部しか経験できずその業務の意味が理解し難い。また忙しい為お客さんと話す機会も無いため現状のサービスの良し悪しが判断しづらくその体制やサービス内容に疑問を感じた。

山小屋の勤務で一番大変だったのが『人間関係』だ。これは下界も山も変わらず組織で仕事をする場合どこでも生じる問題だ。
長く働いていた小屋では理解し難い人間がいて無駄なストレスを抱えていた。
業務に支障が無いレベルの細かいミスをネチネチと嫌味ったらしく注意し、自分のミスは笑って誤魔化す、お客さんに迷惑を掛ける様な重大なミスを犯すわ(他の従業員は一度もない)、すぐテンパッて全体の効率を下げるわ、口先ばかりで実行しないわ、人の否定ばかりするわ、管理職に全く向いていないタイプの人間のお陰で皆疲弊していた。
一度一触即発の状況になりその時はあまりの不条理さに馬鹿らしくなり下山しようと考えた。こちらに非は無いので雇用主に報告し契約期間分の給与をもらい下山する予定だったが、人が抜けても後任者がいない状況で他の従業員に迷惑がかかるので途中で考えを改め当初の予定通り業務を全うした。
大型の小屋も同様に従業員のまとまりが無くグループ分けされていた。業務内容や経験年数によって意識の格差が生まれ、お互いを批判する状態だった。管理的立場にある人間もその状態を黙認(加担)しているのを見て呆れた。
大自然の生活というと下界のくだらない風習を捨て清々しい気持ちでに皆一丸となって取り組んでいこ-!というイメージがあったが、見事なまでにその期待は裏切られた。

山小屋の現状


まず驚いたのが営業期間の短さである。これは勤務する前から解っていた事だが、実際に気候の移り変わりを肌で感じてみると、快適な期間というのは本当に短い。
7月の中旬から下旬が山開きとなるが、その前の春先から梅雨の期間は残雪が多く雪山経験が無いと入山は難しい。
雨や草藪を刈る整備の問題より残雪の状態が重要で、北アルプスの場合は梅雨の雨で雪を溶かし歩きやすい状態になるのが7月の20頃となる(今季は積雪量と雨量や気候で残雪が多く残っていた)。
梅雨が開けお盆までが一般的には晴れ間が続き最適な登山時期となる。その期間はたったの一ヶ月とセミと同じ儚く限られた時間なのです。
お盆を過ぎると一気に気温が下がる、日が出ていないと肌寒く朝晩は特に冷え込みます。私は少しは寒さ耐性がある方で、9月いっぱいは北アルプスでも半袖短パン裸足で過ごせると思っていたが、お盆が過ぎてからは急激な気温の変化に耐えらず靴下を履いたり長パンを履いたりと調整していた。

紅葉が望めないエリアの山域は、お盆を過ぎると利用者が激減し9月中に小屋閉めとなる。紅葉エリアの山でも10月中旬には小屋を閉める。そして雪山へと変わっていく。

この短い期間でどうやって利益を上げるのか?
単純に登山者が多けば潤うし、少なければ廃業を余儀なくされる。立地に左右され良質なサービスを提供できてもロケーションが悪ければ利用者は少なくなる。登山者は山に登ることが目的で山小屋に対しては過剰なサービスは求めていない(ツアー団体はサービスにうるさい)。
サービスの質を向上させて単価を上げたりコストを抑えるより、収容人数を増やし稼働率を上げれば利益は上がる。
つまり大型の山小屋は儲かり、小型の山小屋は儲からないという仕組みだ。収容人数が100を超える小屋ならそれなりに儲かっているだろう。
一ヶ月と短い期間でも月間3,000人の宿泊者があり一泊二食のサービスを受けた場合、9,000円×3,000人で27,000,000の売上となる。7・9月も合わせれば五千万近くとなる。食材の原価・人件費や設備の固定費は比較的低いので十分な利益が発生すると考えられる。

性年代別の利用状況は9割が高齢者で若い人や中年が利用するケースは殆ど無い。60代の団塊世代の登山者が山小屋の顧客となりお金を落としている。若い人は小屋を利用せずテント山行をしている。
登山者全体の割合を見ると、若年層や中年層3割・高齢者7割といった感じ。

10年後には一体どうなってしまうのだろう?
若い人を呼び込もうと工夫している小屋も存在するが少ない、問題意識の欠如の原因はオーナーの古い考えが強く意見が通りにくい。設備投資等の改善も必要だが中長期的な改善案が必要と感じた。

山小屋で働いていて良かった事


・景色を楽しめる
やはりアルプスの景色は素晴らしく何度見ても飽きない。時間帯や天候で様々に変わる景色を何気なく自然に堪能できる事が良かった。

・山を毎日(天気が良ければ)歩ける
気持ちのよい朝の時間帯に荷物を持たずプラっと歩いたり走ったりできる。毎日歩いていると普段気付かない細かな事を発見でき、山の楽しみ方を学ぶ事ができる。登山道を逸れて誰もいない見渡しが良い場所でのんびり過ごすのがお気に入りだった。

・登山者とのお話
沢山の登山者と話をする機会があり色々な山の楽しみ方を聞けたこと。

山小屋で働いていて困った事


・大食いなった
3食+おやつ等を間食しても満腹感を得られず底なしの状態。こってり濃厚味付けのボリュームたっぷりのおかずにご飯は二三杯(3食とも)お代わりをする。毎晩ビールを飲み、日中はコーヒーを何杯も飲み、間に甘いものやお菓子を貪る。入力が増えど出力(便)の量に変化がなかったのでこれは確実に10キロは太ったと思ったが。体重計に載ってみると『まったく変化が無かった??』
原因はストレスか?タバコの本数が減ったから?標高の問題?異常な食欲で他の欲求が抑えられていたのか?
下山して数日でいつもの量に戻った。やっぱ原因はストレスかねぇ。

・トイレ問題
うんちの切れが悪くトイレ時間が長い。不快さを残したくないので毎回トイレットペーパーを濡らして拭いていた(携帯ウォシュレットがあったら良かった)。 深夜の尿意。標高が高く気温が低いので夜は必ず尿意を催す、一度ならず二度三度と行くこともあった。部屋からトイレに行くのもハシゴを下りてと一苦労、毎夜のイベントは億劫に感じた。

・ネット環境
ネット・携帯も繋がらないという下界と隔絶された環境は自然的ではあるが、暇な時間が多く他にやる事も無いので情報収集や発信ができたらより楽しめたと思う。

・菓子等の甘いもの
3食の食事で栄養的には問題はないのだが、甘いものが好きな私にはご飯だけの生活に耐えられなかった。団体や知人が土産にお菓子を置いていくケースも少なく仕方なく食材を使いケーキ等を作って補給していた。甘いものは入手・保存が困難なので山小屋に持って行くと喜ばれます。

・タバコ
この機会に禁煙しようと5箱だけ持って行っていったが、山の美味しい空気で吸うタバコが美味すぎで止められなかった、、5箱では全然足りずヘリ補給の際に個人品として注文するが悪天候でヘリが一週間近く飛ぶことが出来ず、その間登山者に強請(たか)っていた。それでも足りないので吸殻(シケモク)を漁って吸っていた。ヘリでタバコが輸送されたが(本数を減らそうとまた5箱だけ頼んだ)、また足りなくなりヘリ注文・強請・吸殻と同じことを繰り返していた。。タバコを吸う人は沢山持って行ったほうがいいです。

山小屋の一日


 04:00 起床(客が多い時はもっと早い)
 04:00~5:00 調理(お湯・お茶・朝食・弁当を作る・配膳)
 05:00~5:30 朝食(客)
 05:30~6:00 客食片付け・従食を作る
 06:00~6:30 朝食(従)
 06:30~8:30 ヒマ(朝運動で近くの山までランラン♪)
 08:30 朝礼
 08:40~9:30 掃除
 09:30~12:00 ヒマ(小屋内外の雑務があれば対応)
 12:00~12:30 昼食(従)
 12:30~15:00 ヒマ(小屋内外の雑務があれば対応)
 15:00~17:00 調理(お湯・お茶・夕食を作る・配膳)
 17:00~18:00 夕食(客)
 18:00~18:30 客食片付け・従食を作る・朝食の仕込み
 18:00~19:00 夕食(従)
 19:00~20:00 ヒマ
 20:00 消灯
 20:00~22:00 ヒマ・就寝
※10時くらいから昼過ぎまでランチ対応
※日中は売店・受付等の客対応

営業期間中の仕事内容


  • 掃除(客室・屋内外トイレ・帳場・通路・厨房)
  • トイレメンテ(汲み取り)
  • ゴミ焼却・空き缶つぶし
  • 調理(客)
  • 調理(従業員)
  • お湯・お茶(客)
  • 設備(水源修理・発電機ON/OFF)
  • 燃料補充(ストーブ・ランプ・発電機)
  • 食材・備品発注・検品
  • 登山道整備(不備がある箇所だけを対応)
  • 荷揚げ(ヘリ輸送が遅れ営業に支障が生じた場合)
  • 売店対応
  • 宿泊・テント受付

中期・長期の場合は、小屋開け(営業できる状態にする)・登山道整備(梯子・草刈り・ペインティング)など

大型の小屋は完全分業制となり、早番・遅番の交替制を採用している。
朝食(客)も交代で対応するので起きる時間も異なり、休憩時間は拘束されずしっかり休むことができる。

よくある質問


 Q:お風呂はどうしてるんですか?
 A:設備が整っている所(水・発電量)はシャワー、他はガスで湯を沸かてかけ湯。頻度は3日に一度。

 Q:荷物はどうやって運んでいるんですか?
 A:ヘリ輸送(山域によっては昔ながらのボッカもあるがアルプス系は殆どヘリ)

 Q:山小屋で働いている人は体力ありますよね
 A:んなこたない。営業前は体力仕事だが、営業期間は殆んど小屋から動かないから体力が衰える。体を動かす事が好きな人(稀)や気晴らしに近くの山を歩く人以外は太る。

 Q:山小屋で働いている人は山の事詳しいですよね
 A:んなこたない。小屋番は受け答えできる様、最低限の知識は身につけているが興味がない人もいる。下界に馴染めない人・放浪系・山小屋を利用した事がありその小屋を気に入った人・学生の体験バイトなど様々な人が働いているが、意外と山好きで働いている人は少ない。

 Q:空いた時間は何をやっているんですか?
 A:従業員と談笑する事もあるが、共同生活なのでお互いに干渉せず一人で過ごすこともある。ネット環境があればスマホやタブレットでネット。接続環境が無い小屋では本を読んだり音楽を聴いたり料理(従業員用)を作ったり、お客さんと話したりして時間を過ごしている。

 Q:性欲の処理はどうしてるの?
 A:う~ん、どうしてるんでしょう?誘惑や機会も無く、自然の中で多少の不備を感じながら生活していると体が必要ないと判断したようで、私の場合は期間中欲求不満を感じることは無かった(睡眠欲も無く、食欲だけ旺盛だった)。個人差があるかもしれないので不明。

【アルバム その壱】


アルバム その壱

その弐(日記)に続く

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